「せっかくきれいに仕上げたのに、数日ではがれてしまった」——そんな経験がある方は少なくないはずです。
ジェルネイルの持ちは施術者の技術だけでなく、化学的な仕組みを理解しているかどうかで大きく変わります。今回は、ジェルネイルがはがれる主な原因を科学的な視点から整理してみました。


1. 油分・水分の除去不足(サンディング前の下準備)

ジェルは爪表面のケラチンとの間に「アンカー効果(機械的結合)」と「分子間の化学的結合」の両方によって密着します。
しかし爪表面には皮脂や水分が薄い膜として存在しており、これが残ったままジェルを塗布すると、ジェルの成分(オリゴマー・モノマー)が爪表面に十分浸透・接触できず、接着力が大きく低下します。
プレプライマーやクレンザーで油分・水分をしっかり除去する工程は、単なる「仕上げ」ではなく接着の成否を左右する重要なステップです。


2. サンディング不足による表面積の不足

ジェルの接着は化学結合だけでなく、爪表面の微細な凹凸に樹脂が入り込む「アンカー効果」にも大きく依存します。表面が滑らかでツヤのある状態のままだと、接触面積が小さく、アンカー効果が働きにくいため、時間の経過とともに浮きやすくなります。
適度なサンディングで表面粗さを作ることは、物理的な接着強度を高める上で理にかなった工程なのです。


3. 硬化不足(未硬化ジェルと酸素阻害層)

ジェルネイルは光重合性樹脂で、UV/LEDライトの光エネルギーによってモノマーが連鎖的に重合し、硬い樹脂へと変化します。
この重合反応は空気中の酸素によって表面付近で阻害される「酸素阻害層」が生じる性質があり、未硬化のまま拭き取らずに次の工程に進むと、内部の重合も不完全になりやすいことが知られています。
ライトの出力低下(LEDバルブの劣化)、厚塗りによる光の透過不足、硬化時間の不足なども未硬化の原因となり、結果として強度不足・変色・早期の剥離につながります。


4. 厚みと塗布のバランス

ジェルが厚すぎると、光が内部まで届きにくく硬化ムラが生じます。逆に薄すぎると強度が不足し、爪の反りや衝撃に耐えられません。
また、爪の側面や甘皮際まで薄く均一に伸ばす「サイド・キューティクルラインの処理」が不十分だと、そこから水分や空気が入り込み、浮きの起点になってしまいます。
適度で均一な厚みでなめらかなキワ塗りを行うことで、早期の剥がれを抑えることができます。


5. 生活習慣による物理的・化学的ダメージ

  • 頻繁な手洗い・アルコール消毒:界面活性剤やアルコールはジェルの表面を微細に劣化させ、光沢や密着力を落とす一因になります。
  • 食器洗いなどの洗剤:長時間の水仕事は、爪とジェルの境目に水分が浸透しやすくなる要因です。
  • 摩擦・衝撃:日常的な指先の使用は避けられませんが、先端の摩耗はジェルの浮きを進行させます。


6. 爪の伸びによる自爪との境目のずれ

爪は1日あたり約0.1mm前後伸びるとされ、2〜3週間で施術当初のジェルと自爪の境目にズレが生じます。この境目から浮きが進行しやすいのは自然な現象であり、「はがれ」というより「持ちの限界」に近い側面もあります。
しかし、上記のジェルがはがれやすい原因に徹底的に対応することで、この持ちの限界を最大限伸ばすことができます。


まとめ

ジェルネイルの持ちは、「爪表面の前処理」「サンディングによる物理的接着」「光重合による化学的硬化」「日常のダメージ」「爪の生理的な成長」という複数の要因が複合的に関わっています。
はがれやすいと感じたときは、どの段階に原因があるのかを切り分けて見直すことで、持ちの改善につながりますよ。

ご自分で原因がわからない場合は、お気軽に担当ネイリストにご相談ください。
福生市のネイルサロンクロリには、爪のお悩みに寄り添えるネイリストが在籍しています。




参考文献
  • Litaiem N, et al. Side effects of gel nail polish: A systematic review. Clinics in Dermatology. 2022;40(6):706–715. DOI: 10.1016/j.clindermatol.2022.07.008.
  • Chen AF, Chimento SM, Hu S, Sanchez M, Zaiac M, Tosti A. Nail damage from gel polish manicure. Journal of Cosmetic Dermatology. 2012;11(1):27–29. DOI: 10.1111/j.1473-2165.2011.00595.x.
  • Wang E, Lipner SR. Adverse Effects of Do-It-Yourself Nail Cosmetics: A Literature Review. Skin Appendage Disorders. 2024;10(3):180–185. DOI: 10.1159/000536381.
奥島美帆(Rin★)

美容研究家/文筆家/サイエンスキュレーター

年間2,000点以上の化粧品を見極める美容研究家。
早稲田大学大学院修了後、運動生理学・人間工学・臨床心理学を専門に、自動車メーカーで疲労・ストレス研究に12年間従事。その後、教育業界で13年指導を行う。
研究者の分析力と教育者の伝える力を生かし、美容を科学的な視点でわかりやすく解説。成分やエビデンスをもとに、実際の使用感まで踏み込んだレビューに定評がある。
1995年のインターネット黎明期から情報発信を始め、2004年に美容ブログを開設。以来20年以上、変わらず一次情報にこだわった美容コンテンツを届けている。
現在はインフルエンサー・プラスサイズモデル・経営者としても活動。2022年にU to U合同会社を設立し、2023年にはネイルサロン「coloris(クロリ)」をプロデュース。「誰もが活き活きと輝ける仕組みづくり」を軸に事業を展開中。
学生時代はスキーで国体出場、体育会バレーボール部・ア式蹴球部(サッカー部)に所属し、体育教員免許を保有。趣味は作詞作曲と水彩画。猫様のしもべ。